サーファーの一人として

 

 まだ海にはサーファーの姿があるらしい。

 気持ちはわかる。

 目の前で良い波が割れていれば海に入らずにはいられないのがサーファーなのだから。

 そのために他の多くのことを犠牲にしてきたのだから。

 何の補償も伴わない、即ち何の責任も引き受けようとしない口先だけの緊急事態宣言など関係ないと思うなら、その気持ちもわかる。

 キムタクが、 まるでサーファー面して自粛を呼び掛けたのが気に入らないと思うなら、その気持ちもわかる。

 

 でも今回だけは違う。

 満足な装備も無く、いつ感染してもおかしくない状況で、家にも帰ることもできず、満足に休むこともできない状態で、次から次へと担ぎ込まれるコロナウイルスの感染患者の治療に当たっている医療従事者の方々が沢山居る。

 大切な人をコロナウィルスの感染によって亡くせば、すぐそこに居るのがわかっているのに看取ることもできず、骨になるまで会えない。そんな方々が沢山居る。

 

 自分らが海へ行くことによって、その状況を長引かせることになるとしたら。

 その状況を少しでも早く終息させるために自分らにできることは何かと考えたら。

 自分とそれ以外の人々にとって何が大切かと考えたら。

 

 国の宣言など関係ない。

 キムタクの呼び掛けに応じる必要もない。

 自分がどうすべきかは、自分で考えて、自分で決めて、自ら行動してほしい。

 サーファーの一人として。